いい歌詞、いい曲なんだけど、安っぽい音だなあ、やっぱり予算のせいかなと感じていたんだが、音楽担当が加藤和彦だということをクレジットで知り、私はすべてを許しました。
よくぞ、こんな痛快だけど、まずヒットは望めないような映画を作ってくれました。景気低迷でサエない世の中といえど、博多にはまだ、ささやかだけどお金も人も勇気(というか、単にお調子者か)もあったようです。
だいたい、映画で福岡県をアピールしようという発想が単純なら、それをIT革命(森首相より1年は早い)と、ミュージカルと、千葉真一に結びつけてしまう強引さには、奥ゆかしい熊本県民は拒否反応を示すでしょう。
武田鉄矢の県庁職員という工夫のないキャスティングも、ハリスン・フォードがCIA局員をやるぐらいの必然性が感じられるところが、邦画には珍しいリアリティです。
この映画は『オースティン・パワーズ』を博多湾に沈め去りました。それも「デラックス」ではなく、「スタンダード」によってだから、す・ご・い。
食わず嫌いは、とんねるずにまかせて、君たちも見てみんしゃい。
Then and Now : 「シネマレビュー」2000年11月号掲載。「シネマレビュー」というのは、キネコムの守田さんが編集をやっていた、熊本の映画情報のフリーペーパー。光の森に東宝がシネコンを作ることになって、巻き添えを食った形であえなく廃刊しました。この文章、乗りにのってましたね、われながら。