そうムーチョだから

イカしたタイトルを思いつくまで。

私の好きな監督 神代辰巳~?/?/2002・k217

佐賀県出身の、真の意味での女性映画の名手
 神代辰巳の名前を知ったのは『青春の蹉跌』(74年)を見たときだ。主演は萩原健一桃井かおり。野心に燃える無名の青年が社会的に成功しかけるものの、自滅するパターンは、アラン・ドロンの映画にもよくあった。

 時代の雰囲気は映画に投影されるもので、今思うと同じく萩原と田中邦衛主演の『アフリカの光』にしても、行き場のなさ、救いようのなさが当時の状況(オイルショック後の不況)と、映画界の不振が表れていたのかもしれない。また、ベトナム戦争をやっていたアメリカのニューシネマの影響も大きいと思う。

『赫い髪の女』は石橋蓮司宮下順子主演の日活ロマンポルノだが、すっかり日本映画の古典になってしまった。もともと名監督は、いかに女性を美しく、あるいは力強く描くかというところで評価されてきたが、男性の視点・立場を超えた人は少なかったように思う。

 そういう意味で、神代は女性に寄りそい、女性の側から女性を描いた初めての監督ではないか。それは、『悶絶どんでん返し』という作品で描かれるゲイが、コミカルではあっても、偏見は感じられないところにも通じる。

 私が残念に思うのは『宵待草』がヒットしなかったことである。大正ロマンとスケールの大きい冒険談が合わさった長谷川和彦の脚本だったが、配役が地味だったのか。そして邦画の流れは変わり損ねたのだ。

Then and Now : 守田さんの編集する「シネマレビュー」に掲載してもらったのだが、該当号が見つからない。どれも、遥かな昔に見た作品ばかりなので、記憶に残るイメージだけで書いた文章です。すみません。でも伝えたいことはわかってもらえると思います。
 ちなみに、『宵待草』の音楽は、細野晴臣さんが担当してます。