渡部陽一さん(38)を初めてテレビで見たとき、
漫画家の馬場のぼるさんを思い出した。
悪い人には見えないけれど、
新しいジャンルのお笑いの人だと思った。
肩書きの戦場カメラマンというのに
胡散臭さを感じた人は、失礼ながら
多いのではないだろうか。
あの独特の、ゆっくりと噛み含めるような口調の
低音の声はネタだと私も思った。
でも、ネタにしてしまおうとする
番組プロデューサーの思惑をかわしながら、
いつもとつとつと、
言葉を選びながら、渡部さんは語る。
内心、まじかよ、と驚きながら、
「テレビでは、芸人さんたちの真剣さに
すごく刺激を受けています。
番組収録のスタジオが
芸人さんの『戦場』だと知りました」
1月1日付の熊日掲載のインタビューにはそうあった。
そしてこう続く。
「でも、私はジャーナリストの仕事中心にもどるつもりです。
テレビで見かけなくなったら、
戦場で仕事をしていると思ってください」
この「戦場」という言葉が
現実のものとは思えないという私の認識が、
世界の常識からずれているのだろう。
渡部さんは、真っ直ぐだけれど、
やっぱりちょっと変な人なのかもしれない。
でも、そのちょっと変わったところが、
この世界に必要とされているのだと思う。