そうムーチョだから

イカしたタイトルを思いつくまで。

良き導師アルトマン

ロバート・アルトマンのインタビュー集
ロバート・アルトマン~わが映画、わが人生』
ロバート・アルトマン+デヴィッド・トンプソン著
川口敦子訳 キネマ旬報社

「まあ、他の作り手にくらべたら
多様な女性を登場人物として扱ってきたんだろう。
何本か女性がまったく存在しないものも撮っているけれど。
女系家族で育ったのでね。
子供の頃にはふたりの妹と従姉がいつもそばにいた。
父はあまり家にいなかったし。学校では尼さんが先生だったから。
女性たちは若かりし日の私に権力を振り回す位置にいたわけだ。
そんなふうに成長したせいで、女性といるほうが楽なんだと思う。
もちろん彼女たちの操作法も学んできたし、
彼女たちの世界で自分をいかに利用させるかも身につけてきた。
女性の頭の仕組をわかっているふうなふりをするつもりはないが、
相対的に女性のほうが男性より興味深い存在だと私は思うね」

アルトマンのことを女性映画の作り手とは誰も言わない。
それどころか、「その映画における女性の扱いの
露骨な残虐さによってアルトマンは、
機会あるごとに批判されてきた」(D.トンプソン)

「が、同時に彼を最も強烈に擁護してきたのも
他ならぬ女性たちだ。実際、女優たちとの傑出した仕事は
他ならぬ〝映画における女性〟賞良き導師部門
彼に授けている」

彼は、女優にかぎらず男優にしても同じだが、
製作に当たり、彼らの自主性を最大限尊重というか、
引き出すことでの共同作業から生まれてくる
化学変化や即興の妙を持ち味としている。
ということに、映画を見ただけでは気づかせない。
それが真に優れたところだと言えるだろう。
アルトマンの仕事ぶりは、男女共同参画の鑑である。
俳優だけではなく、脚本家などスタッフにも
積極的に女性を登用している。

日本では神代辰巳がそうであったように、
彼が作品の中で女性を描くとき、
彼女たちに寄り添う視点の確かさを私は見てきた。

今日のところは、まあ、そういうわけだ。