そうムーチョだから

イカしたタイトルを思いつくまで。

アンダーグラウンド

「いや、それよりも更に私が深く危機感を感じるのは、
当日に発生した数多くの過失の原因や責任や、
それに至った経緯や、またそれらの過失によって
引き起こされた結果の実態が、いまだに情報として
一般に向けて充分に公開されていないという事実である。
言い換えれば『過失を外に向かって明確にしたがらない』
日本の組織の体質である。
『身内の恥はさらさない』というわけだ。その結果、
そこにあるはずの情報の多くは『裁判中だから』とか、
『公務中のできごとなので』というわかったような
わからないような理由で、取材を大幅に制限される」

これは、村上春樹が『アンダーグラウンド』(講談社刊)の
あとがきp719に書いていた文章である。
ご存知のように、これはオウム真理教による
地下鉄サリン事件被害者へのインタビューを
まとめたものであるが、その大方の部分は、
東日本大震災と、それに伴う原発事故にもそのまま当てはまる。

村上氏は、「日本の組織の体質である」と書いているが、
これはおそらくどこの国においても大なり小なり、
そういうものではないかとも思う。
いけないことだが、それが人間のなせる業ではないか。

とはいえ、日本では現実にあれから20年近く経っているのに、
情報公開に対する姿勢が少しも変わっていない。
ただ、これは他のいくつかの事件でも見られることだが、
時間をおけば、どこからかボロボロと情報が
こぼれてくるようになったこともまた事実である。
全体的には少しずつ、変わってきているのだろうか。