あまり建設的な考えとは言えないが、熊本城というものは、何も手を加えない、そのまま、あるがままにしておくべきだと私は思う。
二の丸広場でイベントをやるなどということは、以っての外である。常設的なものでなければ、大金を投じたスーパー・テーマパークに到底太刀打ちできるわけはないし、それならいっそ潔く、熊本城の持つ荘厳さ、静けさ、重厚長大さを最大限に生かすべきではないか。
そのために私が提案するのは、一種のタイムスリップ空間を城内に作るということである。
武士や腰元が城内で江戸時代そのままの生活をするという映画村的発想には違いないが、決して観光客と一緒に笑顔で写真に収まったりはしない。彼ら江戸時代の城内生活者には、観光客の姿は見えないという設定からだ。
観光客は自ら透明人間と化し、言い方は悪いが、江戸時代の生活を覗き見るだけである。そうすると自然と団体客につきものの騒々しさは消え、セミの声の降りしきる中、ザッザッザッという足音だけが残るであろう。
諸々の解説は、FMを使ったヘッドホンで聞いてもらう。質問は場外へ出てから、インフォメーションセンターで受けつける。そこでは、熊本城が舞台となったり、ロケに使われたりした映画やテレビ番組が、ビデオシアター形式で常時5種類くらい並行して上映されている。(②に続く)