そうムーチョだから

イカしたタイトルを思いつくまで。

恋愛小説、泣けるばかりではなく~5/2/2000

 たまには恋愛小説も良いと思った。読み終わってジーンと来るやつではなく、人生って色々あるけど、やっぱりいいもんだと感じさせてくれる、爽やかなストーリー。

 現在と回想を自由に行き来する自然な文書の流れは、お話としては映画やテレビドラマに出来そうでいても、活字で読むこと以上には楽しむことがむずかしいだろう。
 警句や気の利いた言いまわしの数々の中にときどき出てくる陳腐な表現は、おそらく作者の余裕か、お遊びか。

 主人公の夏美は35歳、既婚の純文学系編集者。夫は同業者、恋人は郵便局員。夫にも恋人がいて、仕事上では才能ある新人作家を奪い合う。

 言葉で表現することの可能性を信じている人の書くものには、言葉の力が宿るのだ。
 小道具のひとつひとつに手触りが感じられ、壊れるときの瞬間の音までも、文章の隙間から聞こえてくるっていうのもぜいたくの極み。

            『A2Z(エイ・トゥ・ズィ)』
              山田詠美著 講談社刊 1400円(税別)
        
Then and Now : 熊本日日新聞「私の三つ星」不採用。400字で、ブックレビューを書くというのには、すっかり慣れてしまった。本の紹介をするコーナーなのだが、やっぱり少しだけ、自分のことを書きたい。というパターンが出来てしまった。そのひとことを書かなければ、この欄に投稿する意味がない。
と気づいてからは、書くことがますます楽しくなって、その上ずいぶん掲載していただいている。本当にありがたいことだ。ところで、これってレビュー的にほとんど満点だと自分では思っていたんだけど。
久しぶりにこの文章を読んで、この本をもう一度読みたくなった。