私が高校の教師だったなら、迷わずこの本を夏休みの課題図書にする。感想文は出さなくてもよい。しかし、読んだ(男子)高校生は確実に変わるだろう。一概に良い方向に、とは言い切れないところが難だが。
本当にかっこいいことは、相当にかっこ悪いこともあるにはあるが、世の中変えられないことはないはずだ。生物の教師、通称ドクター・モローの言葉に突き動かされた彼ら。ともかく、友情に厚く、努力を怠らなければ、オチコボレ高校生にだって勝利はある。それは自分たちの子どもの世代のことになるのかもしれないが。
仲間の死が第一話で語られる。死が身近にあることで、小説として力強さが増していると思う。死というのはこの世の理不尽さでも最大級のものだものなあ。
第三話で、その友人が生きていた夏に戻る構成(それも回想ではなく)は心憎いばかりだ。
『レヴォリューションNo.3』
金城一紀著 講談社刊 1180円
Then and Now : 中年男性の感覚では、まったく別世界に住む若者しか面白さはわからないだろうと思わせるに十分なカバーであった。なんで読む気になったのか。しかし、こういう本に巡りあえるから、読書は楽しい。どこかに私を待っている書物があると、信じられる気がする。
とあるインタビューで著者は、この作品については映画化の意図はないと語っていた。小説で完結して、あまりいじられたくないストーリーというのもあるんだろう。
私の息子にも読ませたが、少年のころに読んでも、その重たさまではわからないようだ。ある程度、取り返しのつかない人生を送ってきて、失ってしまったものの大きさに、ぞっとしたことがある人たちの方が、より共感を覚えるだろう。
熊本日日新聞「私の3つ星」不採用。