小学校の図書室に初めて入ったのは、1年生のときか2年生のときか、よく覚えていない。ちょっと薄暗く、窓だけがやけに明るかったような気がする。
友だちと二人で「ジャングル・ブック」を大声で音読して注意され、図書室では静かに読書することを教えられたのはその日だった。それから図書室によく行くようになり、司書の先生にはいろいろな本を教えてもらった。本との「幸運な出合い」だったと思う。
ある日、祖父が出来たばかりの中央公民館の図書室に行こうというので、喜んでついて行ったが、小学校のそれに比べたらずっと小さく、おまけに子どもの読むような本はなかったので、ひどくがっかりしたことを覚えている。
中学・高校時代はあまり本を読まなかったのが悔やまれる。そのかわりに絵を描いたり、詩を書き日記もたくさん書いたのだが、ほとんど残っていない。そういうものだ。
今、町には図書館があり、近くの町民センターには図書室がある。その上、地区の公民館には、ボランティアで運営される自治会の図書室もある。実に恵まれた環境だ。
図書館で本に囲まれて毎日を過ごせるようになりたいものだと思う。現実逃避だろうか。しかしそこでは、真実のかけらがひっそりと、歴史の重みを分かちあいながら、いつか誰かに読まれる日を唯々待っているのだ。
Then and Now : 平成13年9月20日付熊本日日新聞「おとこの目」掲載。今、思い出したことがある。初めて訪れた図書室の印象は強く残っているものの、実際に親しんだのは、学校改築のために移転した北向きのちょっと薄暗い教室の方だった。だから、この文章の「ちょっと薄暗く」というのは、イメージがこんがらかっているかもしれない。