そうムーチョだから

イカしたタイトルを思いつくまで。

現実よ、ひれ伏せ

金城一紀の『映画篇』(集英社刊)を読んだ。
書店に並んだときは、すぐにでも読みたいと思ったが、
映画→『ローマの休日』というのが、ちょっと、
と、その捻りのなさに
こちらが首をひねったものだが、
これはもっと早く読めばよかった。
アマゾンのコメントでは、最初はいいが(5本の短篇からなる)
次第にボルテージが下がるという人がいたが、
私は、逆に、一番軽いのに、5番目の「愛の泉」に
読みながら期せずして涙がにじんだ。
5つの物語が、それぞれの時間と場所から(そのうえ趣向も大きく違う)、
次第により集まってくるところは、
1枚の手描きのポスターがきっかけで、
映画を見るために集まってくる
その他大勢の人達にも、小説に書かれなかった
それぞれのの人生があることを想像させる。
映画を仕掛けにするのは、安直だと思う。
でもあえて、それをやって、見事に不安を吹き飛ばしてくれた
金城一紀。アマゾンに、著者は女性ではないか、というコメントがあったが、
おっ、鋭いなあ、と感心した。
表現の微妙なゆらぎにそれをを感じる。
文体にときおり、素人っぽさが混じるが
それも愛嬌、まあ大目に見よう。
今夜から、オリジナル脚本で「SP」というドラマが、
フジテレビ系で始まる。
タイミング的に、このエントリーが、
私の嫌悪するプロモーションみたくなったのは、
『映画篇』に免じて、許して下さい。