そうムーチョだから

イカしたタイトルを思いつくまで。

わが庭の芝生

 芝をはさみで刈りながら
 風の音
 木も枝葉もなかったら
 風の音は聞こえない
 それは聞く人もいないというのと
 同じことだが

 芝をはさみで刈りながら
 雑多な草の中から
 食べられる草を見つけた
 遠い遠い遠い祖先を思う
 荒野の石を掘り返し
 作物の種をまいたのか

 芝をはさみで刈りながら
 取りとめのない過去を想う
 もう少し若かった自分
 もっと幼かった子ら
 庭と家と家庭と
 いつかこの手を離れるもの
 つなぎとめる記憶は
 雨と日の光を浴びて
 勝手にちくちくと伸びる
 芝や草のように

 思うように行かぬ人生を
 刈りそろえる
 また気ままに生えることは
 わかっているのに
 傾いた光に青みを増す
 出来映えの
 わが庭の芝生

Then and Now : 大29回熊本県民文芸賞の現代詩部門で、
入選した作品。
本日11月30日付熊日紙上で、講評もいただいた。
読み返したら、もう少し手をいれておけばよかったと後悔。
来年は、5本位は書いて、一番良いのを送ろう。
今年は、これ1本しか書いていません。