東京にいたとき、春木屋というカーテン屋に勤めていた。
三軒茶屋にあって、室内装飾全般を扱っていたので、
お客さんの住まいに寸法取りに行ったものだ。
30年ほど前のこと。
ある日見積りで訪問したマンションにいたのは、
声の感じといい、写真で見覚えのある顔といい、
広川太一郎さんに似た男性。
どうして、本人かを確かめなかったのか
ずいぶん後悔したものだ。
でも、暗くて、話しかけるのも憚られる感じだったし。
もちろん、他人のそら似だった可能性が高い。
だが、私にとっては広川太一郎さんとの出会いということにしておいた。
高校生のとき、深夜やっていたドラマ。
タイトルは思い出せないが、ロジャー・ムーアと
トニー・カーチスが主演で、広川さんの吹き替えが、
まさに筆舌に尽くしがたい。
友人の金田が教えてくれた番組だ。
例えば、「思い出せない。サッパリお茶漬け」とか
「何をおっしゃる、ウサギさん」
「出してたまるか貯金箱」などなど。
吹き替えと言うより、創作芸。
でも、放送されて消えて行くうたかただから、
出来たことかもしれない。
訃報を見て、自分らの思い出をたぐる。
いずれにしても、順送りだもんね。
あ、あの番組、「ダンディ」がついていたような