向井理主演で、「ハングリー!」ってドラマをやっている。
大森美香脚本のこのドラマが、特段面白いってわけではない。
でも、世の中をなめてるとしか思えない、
元バンドメンバーを中心としたレストランのスタッフの
チーム力には素直に声援を送りたくなる。
その中にいつのまにか紛れ込んだ、
片桐はいりさんのエッセイがこれです。
「ハングリー!」においては、あくまで控えめ。
ほんとうに(あまり)目立たない。
そういう演出を私は評価したい。
別にいなくたっていいじゃないの、とは言わないで。
映画館が好きで好きでたまらなかった片桐さんは、
いろいろな役得もあるもぎり嬢を長く務めた。
そのエピソードや、全国の行く先々で、
映画館を訪ねた旅行エッセイでもある。
映画そのものについては、それほど割かれていない。
私も若いとき、三軒茶屋の映画館で
もぎりのバイトをやったことがある。
その頃の私はいい加減な時期で、
仕事中にロビーのベンチで爆睡していて、
ついに首を言い渡された。仕方ない。
だからあまりいい思い出はないのだが、
(というか、関係者のみなさまにご迷惑をおかけしている)
私のキャリアにおいては、確たる1ページを刻む。
それに比べたら、片桐はいりのもぎりは、
本当にプロの仕事ぶりであったようだ。
失われていくものに対する哀惜の念だけで
書かれているのではない。
現実をありのままに受け入れていく、
それは現実に対する消極的な態度だろうか。
そうとも言えないって気がしてくるんだよな。
映画の題をもじった章ごとのタイトルは、
すべてがうまくハマってるわけではなくて、ご愛嬌。