そうムーチョだから

イカしたタイトルを思いつくまで。

ハリー・ボッシュのチキンスペシャル (トマトシチュー)

…たまねぎをむき、グリーンペッパーと一いっしょに刻んだ。
まな板の上のものをフライパンにいれ、バターでソテーし、
ガーリックと他の調味料をまぶす。
そこに鶏の胸肉をふたつ加え、
肉がフォークで骨から簡単にはがれるようになるまで焼いた。
缶入りのイタリアン・トマトソースと、
缶入りのクラッシュド・トマトとさらに調味料をくわえる。
仕上げにエレノアの買った赤ワインを少し加えた。
それをとろ火で煮ながら、…(中略)
ボッシュは、フライパンに最後の仕上げをくわえた。
冷凍豆をひとつかみ取りだし、
ぐつぐつ煮えているトマト・シチューにまぜた。

(マイケル・コナリー 古沢嘉通
「トランク・ミュージック」扶桑社ミステリー より)

というのを作ったんだそうだ。
海外のミステリーで主人公が料理をする場面がよくあり、
ヒロインと一緒に食べているのを読んだりすると、
わははら君ならずともやってみようかと一瞬心をよぎることがある。
ほとんどは量とか時間、火の加減なんかは書いてないし、
我が家の台所には有りそうも無い食材とかが出て来て、
そこであきらめてしまうと思うのだけれど、
わははら君は実際にトライしてみたわけだ。

早速電話してみる。

「うまそうだね」

「うまいですよ。エレノア・ウイッシュに「とても気に入ったわ」

と言わせた「ボッシュ家独自」のレシピですからね。」

「作る上で問題は無かったの?」

「そうなんですよ、「他の調味料をまぶす」とか
「さらに調味料をくわえる」ってるでしょう。
最初の味は、調味料って何だ?てのがわからなくて、
ちょと間の抜けた味だったんですよ。
いつもの伝で大体5食分くらいできちゃうんですけど、
送った写真は4食目ですね。
温めながらその都度味を整えていって、
やっとこれかなというのになりました」

「調味料って何だったの?」

「ブイヨンとかそんなものだと思うんですが、
僕は鶏ガラスープの素を使いました。あと醤油と」

「醤油ってのはジャパン・テイストだよね」

「やだなぁ、トマトソースが日本にあるんなら、
ソイソースがボッシュのキッチンにあってもおかしくはないでしょ」

「…。ま、小説の中の文章だけで実際に作るってのは、
直感調理ならではって言えるよね」

「えへへ、そんなんですよ。
舞茸入れたんですが、なかなか良かった。
あと、ひよこ豆とうずら豆と南瓜の何でも用の水煮の小袋が
スーパーにあったんでそれも入れました。
温めるときには野菜ジュースと赤ワイン足すんです。
どんどん加算方式でやっていくと元の味がわからなくなったり、
何が良くて何が悪かったのか分からなくなってしまうので、
試行錯誤するには、
最初にタッパーに1食分ずつ小分けしておいて良かったなと思いました。
次は、スペンサーシリーズも料理するシーンが多いんで
やってみようかと思っています」

「そうなんだ。いつかご馳走してよ」

「ええ、少しだけ、
少しだけですけどハリー・ボッシュの心の襞に、
哀しさに触れられたような気がします」

「…。(ちぇ、遠くを見てやがんな)」

Tomatostew


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毎度書きますが、このページは
私の友人のともだちであるわははら君が、
私の友人にその友情の証として、
自ら料理して自分一人で食べて、その結果だけを
メールで報告してくるらしいのだが、
そのことを、その私の友人がまたたまに私に知らせてくれる。

読んでもらえばわかるように、
なかなかに独身男性の悲哀があふれていて面白い。
いや、面白い。では悪いかな(笑)
あ!(笑)って書くとまたなんか言われそう。