2016年9月25日の熊日「くまにち論壇」における
福間良明さんのコラムから。
築地市場の移転問題について書かれているのだが、
後段に次の部分がある。
「米国の水爆実験により日本漁船が被ばくした
第五福竜丸事件(1954年)の際には、水揚げされたマグロから
軒並み放射能が検出され、築地市場は1週間の操業停止を
余儀なくされた。こうしたなか、杉並区の主婦たちが
中心になり、原水爆禁止の署名運動が始まった。
運動は瞬く間に全国に広がり、広島で開かれた
第1回原水爆禁止世界大会(55年8月6日)につながった。
その後の原水爆禁止運動の源流である」
ここで福間教授が指摘するのは、
「『唯一の被爆国』という言い方が人口に膾炙しながらも、
東京の食が脅かされるまで、『広島』も『長崎』も
さほど顧みられることはなかった」という事実だ。
(ちなみに、ここで教授は「もてはやされる」という意味で
「人口に膾炙する」という食の問題に言及するのに、
実に含蓄のある表現を使っている)
つまり社会問題が注目されるときの、
中央と地方の格差のようなものである。
「豊洲と福島をめぐる報道や政治の非対称性」、
それは水俣病や沖縄・米軍基地問題にも通じるのではないか、
と述べている。
社会問題化された上は、それまで振り返ることがなかったことを
多少恥じるとしても、何も引け目を感じることはないだろう。
しかし、「福島をはじめとした同種の問題が
掻き消されてはいないか」ということが重要なのである。