そうムーチョだから

イカしたタイトルを思いつくまで。

花のかおりに

ザ・フォーク・クルセダーズの「花のかおりに」という曲は
ベトナム戦争当時の反戦歌だった。
とっても好きな歌だったけれど、
その「花のかおり」について中学生の私は、
実際には特に何も感じたことはなかった。
子どものころの記憶では、
古い家の古い家具やほこりや
カビ臭さのようなものの印象が強い。
庭にはいろんな花が咲いていたというのに、
色や形以上にはその香りについて興味がなかった。

生まれて初めて、花の香りというものを意識したのが
何の花だったか思い出せないのだけれど、
そのことを覚えているのは、
高校の同級生の女子がこう言ったからだ。
「恋をしたら花の香りが気になるとよ」
そんなませたことを言うのが、女子の特権である。
私はそんなことを考えたこともなかった。
好きな女の子はいるにはいたが、
それが恋だという確信はなかった。
歌やドラマに出てくる「恋のようなもの」に
あこがれていただけだったと思う。

多分「沈丁花の香りってよかねえ」とかなんとか、
私は何気なく言ったのだろう。
それで、恋をしていると心を見透かされたというか、
決めつけられてしまったのだ。
確かにそうだよな。
沈丁花の色と形は春先に庭の何箇所かで
咲いていたことを覚えている。
でも子どものときにはその香りについて、
いい匂いだとか思ったことはなかった。少なくとも覚えていない。

どこからともなく花の香りが漂ってくると、
いまはそのありかを探す。
そしていまでも「恋をしたら」のことばが蘇る。
失礼ながら誰がそれを言ったのか思い出せなくなった。
でも、ユリであったり、金木犀であったり、
そういう息もつまりそうな花の香りが
いつのまにか大好きになっていた。
これがおとなになるってことなのか。
逆に言えば、もう子どもには戻れないということでもある。
死ぬときはくちなしの花の香りで窒息したいとか
半ば本気で思ってしまう。


Then and Now :京都にある松栄堂というお香の老舗が、
「香・大賞」→リンク という公募をやっている。
もちろん入賞するつもりで応募。
忘れていたわけではないが入選通知が来ないので、
サイトを見ると既に発表されていた。
いやあ、26回目だけあってレベルが高い。
この文章は、これまでに書いた断片の寄せ集め
みたいなものだ。
「連戦連敗(by安藤忠雄)」記録をさらに更新。