昨日の熊日読書欄で、宇宙物理学者の池内了さんが、
バリー・パーカー著『戦争の物理学』(白揚社刊)について
書いている。
帯には「戦争が、科学技術を進化させた」とあるのに対し、
「本書で著者は『物理学が戦争の技術に大きな貢献をした』
と述べている」とその関係性が逆になっていると指摘している。
どちらも別の側面から見ているということで、
間違っているわけではないのだが。
そこで、ふと思い出した記事が、昨年6月7日の同じく熊日読書欄。
ジム・バゴット著『原子爆弾 1938~1950年』(作品社刊)の
書評である。と思ったら、こちらも池内了さんが書いていた。
「著者の新たな視点とは、核開発過程を、主にドイツと米国の
『史上初の物理学戦争』と見立てたこと。
物理学者たちがなぜ世界で最もむごたらしい兵器をためらいもなく
開発しようとしたのかと問い掛け、追求している。
その解答は、ドイツの物理学者ハイゼンベルクが述べた
『物理学のために戦争を利用しなければならない』という
意識であったように思われる」
また実に興味深いのが次の一文である。
「最大の疑問は、第2次世界大戦が始まるまで世界の各物理学を
リードしていたドイツがなぜ核爆弾を造ろうとせず、
原子炉の製作も中途半端なままに終わったのかというものだろう」

原子爆弾 1938?1950年――いかに物理学者たちは、世界を残虐と恐怖へ導いていったか?
- 作者: ジム・バゴット,青柳伸子
- 出版社/メーカー: 作品社
- 発売日: 2015/03/21
- メディア: 単行本
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