熊日に連載されていた、
東京国立博物館研究員の塚本麿充さんの
「中国絵画の名品を訪ねて」という連載。
中国絵画に別に興味があるわけではないが、
教養の一つとして読んでいたところ、
5月17日の第4回に、これがあった。
山口県萩市にある菊屋家は、
萩藩の御用商人として江戸時代以来繁栄してきたが、
そこに数々の名品が伝来して今に引き継がれている、
ということが書かれている。
山口県立美術館で公開された多数の名品を見て、
「最も感動したのは、
これだけの質と量の作品を散逸することなく、
萩に住む人々が、美しい萩の町並みの中で
大切に守り伝えてきたという歴史である」と塚本さんは書く。
「身にしみて分かったのは、
名品は誰かが守ってきたから存在するという単純な事実だった。
偶然に伝来した名品など一つもない。
文化は、守るから後世に伝わっていくのだ。
伝来したこと自体が、地域に生きた人々の歴史の証しでもある。
そんなことも教えてくれた名品である」
そこで取り上げられたのは、
約600年前の明時代に活躍した戴進の「春冬山水図」。
伝来もさることながら、
宮廷画家だったからこそ制作できたということ、
またそれを日本で守り伝えることができたのは、
萩藩の御用商人だったという財力あってのこと、
ということにも思い至った。
反対に残らなかった名品も数多くあることだろう。