そうムーチョだから

イカしたタイトルを思いつくまで。

知られざるコカ

赤旗日曜版8月28日号に
フリーライター飯尾響子さんが書いていた。

「先進国では、コカはコカインの原料として悪名高い。
しかし精製される前の緑の葉っぱは、
白い麻薬とは全く違うものだ。
多くのビタミン、ミネラル、アルカロイドを含むので、
たとえば食事をとる暇もない農繁期、
農民たちは乾いたコカの葉を何十枚も口に含み、
良く噛んでから片頬に寄せておく。
するとじわじわ染み出す栄養分が空腹と疲れをなだめ、
仕事をはかどらせてくれるという」

「つまりコカは、
お茶やガムのような嗜好品であり、
また神々に捧げる榊にも似た役目を果たす、
この上なく大切な伝統作物なのだ」

この「風の色」という連載は、ペルーの生活について、
貴重な情報をもたらせてくれる、面白い読み物だ。

コカイン精製法を発明し、消費している「先進国」は、
コカの木が悪の元凶だから、栽培禁止せよと
たわけたことを言っている。
ペルーの人からすればそういうことらしい。

コカインといえば、
経済的に成功した欧米のミュージシャンが陥る甘い罠であり、
それで崩壊した才能と人生数知れずの悪玉である。
実は私も、他に稼げる農産物が乏しいとはいえ、
麻薬栽培はいかんだろう、と単純に考えていた。
しかし、現実はいわゆる「先進国」の
お金持ちの道楽としてのコカイン供給がすべてではない
ということのようだ。

もちろん「食事をとる暇もない農繁期」という農民の生活が、
それだけで貧しく悲惨なものであることを思わせるのだが、
コカの葉が、神々への捧げものになった歴史は、
大昔のその先の裕福な文化に始まっているのかもしれない。

このエッセイは、身の程知らずな外圧に対して、
ペルー人の誇りにかけて、
コカ味の飴や、コカパン、コカワイン、
さらに毛根を強化するコカシャンプーとかまで開発、
コカ消費拡大運動みたいなことをやっている
ペルーの今を私たちに伝えてくれました。