そうムーチョだから

イカしたタイトルを思いつくまで。

「小説 ザ・ゼネコン」

 主人公山本泰世が、都銀中位行大洋銀行から、中堅ゼネコン東和建設に出向を命じられるところからこの話は始まる。1987年、日本経済は、はじけるとは夢にも思わず、バブルを急速にふくらませつつあった。
 ゼネコンが舞台の小説である。だが、業界で台頭していくための政治家とのつながり、世界的なホテルチェーンを買収する過程での、銀行同士のさや当てや調整など、ゼネコンは本来、建設業という以上に「契約者」「請負者」の意味であったことを改めて思う。
 東京都庁舎や関西空港に絡む政官業の癒着と談合のエピソードは、意外なほどあっさり描かれる。それよりも社長の後継者問題、社内での覇権争いなど、どの業種においても共通する話がメインなので、暴露小説を期待してはいけない。ただ、バブル崩壊に至るまで、主人公を始め魅力的な登場人物のその後の去就、また東和建設がどう突き進むのかも気になる。続編が読みたくなる小説だ。
 
             「小説 ザ・ゼネコン」
                  高杉良
               ダイヤモンド社刊 1700円

                      (11/22/2003)

コメント:熊本日日新聞平成15年12月7日付「私の三つ星」掲載。