歯科医でロック・ミュージシャンのサエキけんぞう氏の著書『さよなら!セブンティーズ』は、
私にとって、かなり、後悔してもしきれないほどの自責の念に駆り立てられる本である。
千葉と熊本と育った場所が違うということではない。
思い切り、恥知らずにも大胆な行動を取らなかったことに対してである。
もちろん、死にたくなるくらいの馬鹿をやらなかったわけではない。
しかし、少しばかり遠慮していたな。と思うのだ。
「鈴木ヒロミツの豪放なボーカルを思い出すと、人が「ロックであること」は、
たった1日だけであってもいいし、一生でもいいし、
あるいは限定されたある期間だけでも、どれでもいいのではないか?
と思えるのである」
これは、この本に収録された
先日亡くなった鈴木ヒロミツさんについてのサエキ氏の文章である。
もちろん、亡くなることなんか夢にも思わないで書かれている。
結果的にそういうことになったので、静かだがズシリと重い。
タイトルは「鈴木ヒロミツの温かい手のひら」である。
19日のNHK-FM「ミュージックプラザpartⅡ」で、
つのだ☆ひろさんが、モップスの鈴木ヒロミツさんの特集をやっていた。
いつもああいう声ではあるが、
お終いの方では、少し涙声だったような。
鈴木慶一氏も自身のブログで、哀悼の意を表していたが、
鈴木ヒロミツさんのこと、
「アニマルズのエリック・バードンだ」という認識をみんな持っていたのだろうか。
私が番組で聞いたのは、
「朝まで待てない」これは、阿久悠さんの作詞デビュー作で有名な曲。
「たどりついたらいつも雨降り」吉田拓郎、このころ天才だった(ご無礼!)。
「大江戸冒険譚」つのだ☆ひろ作詞、加藤和彦作曲。ボラン・ブギーを
ちょっと照れくさそうに演奏したという感じ。
「気楽に行こう」モービル石油のCMソング。「車はガソリンで走るのです」の
ナレーションは、加藤和彦だったという話。
「何処へ」この曲は覚えがないが、失くしたものの大きさがよくわかる。
こういう言い方は非礼だが、PANTAにはずっとずっとがんばってほしい。
そういうことを実感する。
ニッポン放送の元社長・亀淵昭信氏が「オールナイトニッポン」の
パーソナリティー(因みにこの言い方は、この番組で初めて使われた)だったころ、
ヒロミツさんは、懐かしのGS特集でゲストに来て、
ほんとうに面白くて、マニア心をくすぐる裏話をたくさんしてくれた。
「日本のロックファンが、「日本のロック」のレコードを買わないから
俺たちはやりたい音楽がやれない」発言(大意)がなされ、
それに怒ったリスナーが、
買いたくなるようなレコード作らないのが悪いんだよと葉書を書いた。
子どものケンカである。
どこで見聞きした話だったか忘れたが、
氏が、ドラマなどのタレント活動に傾斜していったのは、
そういうところに原因があったのではないかと私は思っている。
1月にあと3ヶ月と余命宣告をされて、
誰にも言うなと口止めしたそうだ。
これはつのだ氏が番組で語ったエピソード。
見舞い客の対応などに時間を取られるよりは、
家族と過ごす時間を大事にしたいと
言っていたらしい(モップス元メンバーでもある実弟の幹治氏談・大意)。
私がヒロミツ氏のことをどう思っていたか。
グループサウンズの語り部。
私にとってはそれに尽きる。
さよなら!シクスティーズ
サエキ けんぞう / クリタ舎(2007/02)