そうムーチョだから

イカしたタイトルを思いつくまで。

新・素敵な人生・素敵なパートナー

これは、広報こうし3月号に晴れて掲載されたものです。
嫌味な文章だと今ならよく分かる。

私が子どもの頃は、テレビドラマや映画に出てくる男性で、
自分の妻を「ワイフ」と呼ぶのは、珍しくなかったように記憶する。
そして妻のほうでは、夫のことを
「ハズ」と言ったりすることもあった。
「ハズバンド」の略で、少し気取った呼び方だったような気がする。
なんで英語だったのだろうか。昭和三十年代から四十年代のことだ。
夏目漱石の小説では、妻と書いて「さい」とふりがなを打ってある。
五木寛之は自分の妻を「配偶者」、野坂昭如は「家人」と書いていた。
一種の照れであろうか。
昔から、自分の妻のことを「女房」や
「嫁さん」と呼称するひとは結構いたが、
関西の芸人が「嫁」という言い方を流行らせた節がある。
そしていま、男女平等、男女共同参画の観点から、
「嫁」や「家内」「主人」は不適切ではないか
とする意見もあるようだ。
既婚女性に対して、
「お宅のご主人は」と持っていくのは良くないと考える人もいて、
「夫さん」という場合もある。男性既婚者に対して、
その妻を何と言ったらいいのか。悩ましい。
言葉は記号であると割り切ると、ある男女がお互いを尊重し、
敬愛の念を持ちつつ夫婦であるとき、
「主人」でも「家内」でもそれほど気にすることではないだろう。
いや今や夫婦が男女のカップルであることに限定されない、
新しい関係のあり方も認められるようになってきた。
受け止める側にある種の寛容の心が求められるのかもしれない。